ライソゾーム酸性リパーゼ欠損症
(LAL-D)
ライソゾーム酸性リパーゼ欠損症(LAL-D)は、ライソゾーム酸性リパーゼを作る遺伝子(LIPA遺伝子)に変化があるため、細胞の中にあるライソゾーム中の酸性リパーゼという酵素がなかったり、働きが弱かったりすることによって、本来は分解されるはずの物質がライソゾームの中にたまる病気です1。
ライソゾームの中には、数十種類もの酵素が存在しており、これらの酵素はライソゾームの中へ取り込んだ物質を再利用できるように分解してライソゾームの外へ送り出すという重要な役割を持っています。ライソゾーム酸性リパーゼは、このような役割を持った酵素の1つで、コレステロールエステルやトリグリセライドという物質を遊離コレステロールおよび遊離脂肪酸という物質に分解する働きを持っています。LAL-Dはライソゾーム酸性リパーゼがなかったり、働きが弱かったりするために、ライソゾームの中にコレステロールエステルやトリグリセライドが分解されずにたまる病気です1。
LAL-Dは乳児期に発症する乳児型(別名:ウォルマン病)と小児期から成人にかけて発症する遅発型(別名:コレステロールエステル蓄積症)に分けられます。
乳児型LAL-Dの患者さんは、ライソゾーム酸性リパーゼを作ることができません。生後1~2ヵ月頃より症状が出てきて、急速に進行し、肝不全などの非常に重く生命に危険がおよぶ症状が現れます1,2。
乳児型でみられる症状には以下のようなものがあります。
- 肝臓や脾臓が腫れて腹部が膨らんでいる
- 下痢や嘔吐などの消化器症状
- 体重の増加や身長の伸びがみられない
遅発型LAL-Dの患者さんは、ライソゾーム酸性リパーゼの作られる量が少なく、働きが弱いです。個人差が大きく、症状が現れる時期は、幼児期から成人期までさまざま、あらわれる症状も異なりますし、進行の程度も患者さんによって異なります。
遅延型でみられる症状には以下のようなものがあります1,3。
【肝臓】
- 肝機能検査値(ALT・AST)が高い
- 肝臓や脾臓が腫れて大きくなる
- 脂肪肝、肝硬変などと言われる
【脂質異常症】
- 総コレステロール値が高い
- LDLコレステロール値(悪玉コレステロール)が高い
- HDLコレステロール値(善玉コレステロール)が低い
- トリグリセリド値(中世脂肪)が高い
【消化器症状】
- 下痢や吸収不良など
症状や血液検査、肝臓の画像検査(超音波検査など)、肝臓の組織を調べる検査(肝生検)などからLAL-Dが疑われる場合には、血液検査でLALの働きやLIPA遺伝子を調べます。
■ LAL-D患者さんとそのご家族の方向けの情報サイト:LAL-D your way
参考文献:
村上 潤, 福嶋 健志, ライソゾーム酸性リパーゼ欠損症 - Wolman病、CESD. 医学のあゆみ 別冊 vol. 264, No.9, 2018.3.3., 829-832
乾 あやの, Wolman 病. 新領域別症候群シリーズNo.23, 血液症候群(第2版), 2013, 500-503
全 陽, ライソゾーム酸性リパーゼ欠損症. 肝・胆・膵 2014, 69, 445-453