非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)
非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)は、免疫システムの1つである補体の働きが活発になりすぎることで、体中の臓器の血管が傷つき血栓が形成され、腎臓、心臓、脳、胃や腸などに様々な症状が現れる病気です。
補体は、体内に侵入した細菌などの外敵を攻撃して感染症などから体を守る、免疫システムの 1つです。この補体の活性化は、本来、補体制御因子によりコントロールされていますが、aHUSでは、補体制御因子の遺伝子変異などによって、補体の活性がコントロールできなくなっています1。
aHUSの原因となる遺伝子の変異は、親から子へ受け継がれる可能性があるものの、仮に遺伝子の変異を受け継いだとしてもこの病気を発症するかどうかはわかりません。また、発症のきっかけや時期もさまざまで、性別に関係なく乳児から大人までの幅広い年齢層で発症する可能性があります。海外では、毎年100万人あたり成人で2人が発症、小児では100万人に7人が発症という報告があります4。
aHUSの患者さんでは、補体制御因子の変異によりコントロールがきかなくなった補体が自分自身の細い血管の内側の細胞を攻撃します2, 3。これにより、全身にある細い血管で数多くの血栓が形成される血栓性微小血管症(TMA)という病態が生じます。このTMAによって、生命の維持に重要な臓器が突然機能しなくなったり、長期にわたって徐々に機能を失ったり、さまざまな症状や合併症が現れる可能性があります。
aHUSで見られる症状・合併症は、血中の血小板が減少する血小板減少症や、赤血球が血栓にぶつかり破壊(溶血)される微小血管障害性溶血性貧血といった血液の異常だけではありません。おもに腎臓、心臓、脳、胃や腸といった消化管などの臓器に障害が生じます。腎臓の機能が悪くなって末期腎不全に至り、透析や腎臓移植が必要になることもあります。また、高血圧、心筋梗塞といった心血管系の症状や、精神的な混乱といった中枢神経系の症状が現れたり、下痢や吐き気・嘔吐などの消化器系の症状、呼吸困難などの呼吸器系の症状が現れたりします。
参考文献:
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Noris M, Remuzzi G. Atypical hemolytic–uremic syndrome. N Engl J Med. 2009;361(17):1676-1687.
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Kato H, Nangaku M, Hataya H et al. Clinical guides for atypical hemolytic uremic syndrome in Japan. Clin Exp Nephrol 2016; 20: 536–543.
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Loirat C, Frémeaux-Bacchi V. Atypical hemolytic uremic syndrome. Orphanet J Rare Dis. 2011;6:60.
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Kavanagh D, Goodship TH, Richards A. Atypical hemolytic uremic syndrome. Semin Nephrol. 2013;33(6):508-530.