低ホスファターゼ症 (HPP)1
低ホスファターゼ症(HPP)は、強く健康な骨を作るために必要な「アルカリホスファターゼ(ALP)」という酵素を作る設計図である「ALPL遺伝子」に変化が起こり、ALPの働きが悪くなったり、働かなくなったりするために起こる病気です。
ALPの働きが正常な人では、ALPによって、骨の中にある無機ピロリン酸という物質が分解され、リン酸が作られます。そのリン酸がカルシウムと結合することで、ハイドロキシアパタイトと呼ばれる固い結晶ができて骨や歯に蓄積し、強く健康な骨が作られます。HPPでは、ALPの働きが悪くなるため、無機ピロリン酸が分解されずリン酸が作られません。そのため、カルシウムとリン酸が結合することができず、強く健康な骨を作ることができなくなります。
HPPの症状は、症状がでる時期や症状によって6つのタイプに分けることができます。
1. 周産期重症型HPP:おなかの中にいるときや生まれた時に見つかる
2. 周産期良性型HPP:おなかの中にいるときや生まれた時に見つかる
3. 乳児型HPP:生後6ヵ月までに症状がでる
4. 小児型HPP:6ヵ月から18歳までの間に症状がでる
5. 成人型HPP:18歳を過ぎてから症状がでる
6. 歯限局型HPP:歯のみに症状がでる(1~4歳までに乳歯が抜ける)
HPPでは、骨や歯を中心に、全身に様々な症状が現れます。症状が現れる年齢や症状の種類や程度は一人ひとり違います。身長の伸び、体重の増加などの成長や、ハイハイ、立ち上がりや歩き始めなどの発達がゆっくりなことがあります。また、走ったり、階段の上り下り、重い物を運ぶ、着替えるなどの日常生活動作が簡単にできなくなることがあります。
骨が短い、曲がっているなどの「骨の症状」や、1歳から4歳までに乳歯がぐらぐらする、抜けるなどの症状があり、HPPと疑われたら、血液検査でALPの働きやALPL遺伝子を確認します。
参考文献 :
低ホスファターゼ症診療ガイドライン 2019年1月11日公開 低ホスファターゼ症診療ガイドライン作成委員会、
国立研究開発法人日本医療研究開発機構 難治性疾患実用化研究事業「診療ガイドライン策定を目指した骨系
統疾患の診療ネットワークの構築」研究班(研究開発代表者 大薗恵一)作成