トランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)

 

アミロイドーシスとは、「アミロイド」と呼ばれる異常なタンパク質のかたまりが体の臓器にたまり、本来の働きを失わせる病気です。「アミロイド」とは、体のなかで重要な働きをしているタンパク質の形や性質が変わり、水や血液に溶けにくい繊維状になってしまったものです。
アミロイドーシスは、アミロイドが全身のさまざまな臓器にたまる「全身性」と、1つの臓器のみにたまる「限局性」に分けられます。「心アミロイドーシス」は、全身性アミロイドーシスのなかでも、アミロイドが心臓にたまり、心臓のはたらきに異常を起こした状態を指します1

アミロイドのもととなるタンパク質は、現在30種類以上あることがわかっており、「トランスサイレチン(TTR)」はその1つです。「トランスサイレチン型心アミロイドーシス」は、TTRの異常によりできたアミロイドを原因とする心アミロイドーシスです。
遺伝子の変異(変化)を原因とする「遺伝性」と、加齢を1つの原因とする「野生型」に分けられます。「遺伝性トランスサイレチン型心アミロイドーシス」は、20~70歳代まで幅広く、心臓以外にも神経や消化管などにアミロイドがたまりやすいことが知られています2。一方で、「野生型トランスサイレチン型心アミロイドーシス」は高齢男性に多く、心臓以外では手首や神経の通り道にたまりやすいとされています2

トランスサイレチン型心アミロイドーシスでは、心不全や不整脈、大動脈弁狭窄症、手根管症候群、脊柱管狭窄症などが、病気と関連してあらわれることがあります。
進行すると治療困難な重症の心不全を引き起こしますが、近年では進行を防ぐ治療ができるようになっており、早期の発見が重要視されています。しかし、他の心臓病の症状と似ていることもあり、正しく診断されていない患者さんもいます2
より多くのトランスサイレチン型心アミロイドーシス患者さんが適切な治療を受けられるよう、この病気が広く知られることが望まれています。

参考文献:

  1. 日本アミロイドーシス学会. アミロイドーシスについて. https://www.amyloidosis.jp/about-amyloidosis.html. 2025年2月参照

  2. 日本循環器学会(編). 2020年版心アミロイドーシス診療ガイドライン. p.9-11,19,22-24,65. https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2020_Kitaoka.pdf. 2025年2月参照